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医院・中病院・大病院の3か所で「間質性肺炎」の疑いありということで、1月31日から昨日まで入院していた。

強烈な片頭痛が、丸3日続いたその2日目に髄膜炎を疑い、背骨に針を(うまくいかず6回)突っ込んで骨髄液を採取したが、幸い異状はなかった。でも、咳がひどく、31日にレントゲンを撮ってもらうと、肺に影。 間質性肺炎かもしれないということで、紹介して頂いた別の中病院でCTを撮り、その場でアニメーションを見せてもらったら、やはり「間質性肺炎」とのこと。「辛抱強いですね」とお医者さんは言ってくれたが、今の自分の苦痛がどの程度のものなのか自覚できなかっただけのこと。それから間もなく、呼吸器科の設備が整っている大病院へ、鼻から酸素補給をしながら救急車で搬送された。救急車は間違って別の病院へ行ってしまい、運転手さんバツの悪い顔をしていた。ストレッチャーで救急医療室へ通され、腕から静脈血の採取、「ごめんなさいね!オマタの間から動脈血採らせてもらいますね!痛いですよ!」とかわいい看護婦さん。一瞬どこに針を刺されるのかと思ってビビったが、左腿の付け根だった。なぜか現場は男も女もハイになって楽しそうだ。こちらは天井に固定されたモニター画面の、呼吸リズムも心音もピッコピッコ乱れっぱなし。すぐにまたCTの撮影をしたが、撮影のわずかな間も咳き込んで息を止めていられなかった。撮影後救急医療室の隅に運ばれる。カーテンの向こう側では誰かが朦朧状態でうめいている。そこへ妻が入ってきて、「間質性肺炎」について急遽スタッフに調べさせた情報をもってきて、携帯の画面で僕に読ませる。
 
「1)間質性肺炎とは、肺胞と肺胞の間の隔壁(間質)の結合組織に起こる炎症で、進行すると、その結合組織に線維化が起こり、間質が硬く大きくなって、肺全体の弾力性が失われ、やがて、肺線維症が引き起こされます。発生しやすい年齢は、男性、女性とも50?60歳代です。【症 状】 発熱、倦怠感、咳、呼吸困難、肺性心、浮腫。 2)インフルエンザによる肺炎は、一次性のウイルス性肺炎と二次性の細菌性肺炎があります。ウイルス性肺炎は剖検例や画像所見で見る限り、間質性肺炎です。インフルエンザ発症後4日目までに起こることが多く、乾性咳そうと肺胞のガス交換不全により著明な動脈血酸素分圧の低下を起こします。7月中旬に「Nature」に発表されたサルを使った感染実験でも、肺胞、間質の炎症部位に一致してウイルスを含む細胞が認められ、終末気管支から肺胞レベルまでウイルスが達して肺炎を起こしていることが確認されています…」。

「【ウィキペディアより】 間質性肺炎(かんしつせいはいえん、interstitial pneumonia (IP))は肺の間質組織を主座とした炎症を来す疾患の総称。治療の困難な難病である。進行して炎症組織が線維化したものは肺線維症(はいせんいしょう)と呼ばれる。間質性肺炎のうち特発性間質性肺炎(後述)は日本の特定疾患。間質性肺臓炎(interstitial pneumonitis)ともいう。症状/その病態から、呼吸困難や呼吸不全が主体となる(息を吸っても吸った感じがせず、常に息苦しい)。また、肺の持続的な刺激により咳がみられ、それは痰を伴わない乾性咳嗽である(痰は気管支や肺胞の炎症で分泌されるため)。肺線維症に進行すると咳などによって肺が破れて呼吸困難や呼吸不全となり、それを引きがねとして心不全を起こし、やがて死に至ることもある。
 
「なんや…ややこしそうな…病気やな…ハフ…ハフ……」
妻はいつになく真剣な表情で黙っている。

そこへ、担当に決まったばかりの主治医の先生来られてご挨拶。間質性肺炎は難しい病気なので、気管支鏡の検査をしたいとのこと。必要なことはやってもらわないとと思ったが、念のため、それはどんな検査なのか聞くと、胃カメラの細いようなやつを気管支の奥に入れて、肺に水を注入し…(ちょっと待って…それって溺れている状態…)。必要に応じて麻酔をかけるが、朦朧状態で暴れだすこともあり(そりゃ暴れるだろう)、さらに事故で気管支鏡が肺に刺さって気胸になることもあり、検査をしても結局原因が完全に判明するとは限らない、しかし難しい病気なので原因の究明ができないまま、ステロイドで炎症を抑えても治療に結びつかない危険性もある云々とのこと。病院としてインフォームドコンセントがしっかりしている点は敬服したが、激しい咳が続いているこの状態で、胃カメラみたいなものを気管支の奥に入れて、おまけに水を注入し…、これはできる話ではなかった。「一晩考えさせてください」とお願いしてその場は逃れたが、腹は決まっていた。こんな咳の中であんな検査するぐらいなら、子供産む方がまだ楽に決まっている。絶対にやらんぞ。

幸い個室が空いていてストレッチャーでそこに運ばれた。通路が寒く、寒暖差で激しく咳きこんだ。肺の酸素吸収能力は低く、部屋でもトイレに行く時も鼻に酸素の管を入れていた。

翌日、妻が間質性肺炎についてネットで調べた情報を、たくさんプリントして持ってきた。「風邪症状の後、急激に呼吸困難に」、「別名『肺線維症』」、「肺の線維化が進み、肺が縮んでゆき、ついには呼吸ができなくなり、死に至る…」、「美空ひばりが死んだ病気」、「原因不明」、「肺移植が有効」、、、どの資料をみても、ろくなことが書いてなかった。

主治医の先生が来られ、病状と気管支鏡の検査の重要性について長い時間話してくださったが、先生の仰ることは正しいと思う、でも頭で理解できるということと精神的に受け入れられるかどうかは別の問題、僕はこんなに見えてもいたって気の小さい人間なので、申し訳ないがこの検査は辞退したい、とお伝えした。主治医の先生は不満ながらも納得してくださり、気管支鏡の検査はなしでいくことになった。
僕は6歳以前に池で溺れたことがある。せっかく忘れているのにフラッシュバックしてPTSDにでもなったらかなわん。

激しい咳は続いた。先生に咳止めのシロップをお願いし、届けてもらった。とにかくこれを鎮めることが最優先だ、鎮まらなければ炎症は進むばかり。咳はほとんど痰が出なかった。これは間質性肺炎の咳の特徴らしい。また呼吸の上の方ではなく下の方、つまり息を吐いて肺に空気がほとんどなくなった時に咳きこむため、すごく苦しく、咳くたびに頭痛が起きた。

そうか、これは死ぬ病気なのか…。
まあいい、明日考えよう。

自分が数日後か数週間後に死ぬと聞かされても、そんなことより今呼吸することの方が大事であり、先のことまで考える気になれなかった。人間誰しも死ぬ前に「断末魔の苦しみ」を味わうらしいが、苦痛は恐怖を和らげ遠ざけるものだと思った。そして最後の瞬間まで生き続けるのだから、死は本人にとって大したことではない。
「間質性肺炎」についての資料はその後目を通さず、ipadで仕事の指示をしては、新聞や本ばかり読んでいた。この病気なら、どうせ助からん。 しかし、肺が線維化して萎縮して、呼吸ができなくなって死ぬのはつらいな。考えようによっては肺癌より性質が悪いやないか。自分が死んだあと、皆が困らんように「段取り」しておかんといかんな。生命保険のン億円で当分の運転資金は問題ないけど、その後のプランやプランの立て方、状況に即した問題の解決方法、ちゃんと教えておかんといかんなあ。要するに「死ぬ」ってことは、一から十まで「段取り」やないのか…。


その後、幸い主治医の先生が初日から処方してくれた抗生物質が効き、肺の炎症は徐々に治まってきた。2月7日の早朝に血液検査、その日、時間が取れ次第CTスキャンという予定になっていたその午後、「こんにちわ」と病室のカーテンがひらき、最初にお世話になった開業医の先生の顔が見えた。「先生!これはこれは恐縮です…コホコホ」 先生は僕の病状が気にかかりわざわざ訪ねて来て下さったのだった。間もなく主治医の先生が来られ、別の部屋でずいぶん長い時間二人で話しておられた。レントゲンと血液を見る限り、來田さんの病状は快方に向かっている旨の説明を受けられた先生の表情は、さっきよりだいぶ明るかった。そこへCTが空いたとの連絡があり、3人で降りて行き、正面出口の手前で先生に失礼した。CTはドアを入って出るまで僅か5分たらず。 また寒い廊下を車椅子で部屋まで運んでもらったが、もう激しく咳きこむことはなかった。

その数時間後、CTの結果を見て主治医の先生が来られ、心配の多くが去ったことを知らされた。
間質性肺炎の原因は「マイコプラズマ感染症の疑い」ということだった。もういつでも退院OKとのことなので、一日おいて翌々日の朝に退院することにした。退院後の夕方、一番に開業医の先生に報告に行き、お借りしていたレントゲン写真と、主治医の先生からのお手紙をお渡しした。「マイコプラズマ肺炎」は子供の病気で、患者の多くは5歳からせいぜい40歳まで、あなたは若いから罹ったんでしょう、と、先生笑顔で冗談を言った。確かに僕は来年還暦を迎えるが、この前先生とこで血管年齢を測ってもらったら、30代後半から40代前半だった。毎日の適度の飲酒と、週1回の山盛り生ニンニク、それに好きなように生きていることがその秘訣だと思う。

やっぱり!期限なしに生きていられるのは楽しい!
「生への絶望なくして生への愛もなし(A.Camus)」か。 感謝!感謝!!
でも、生きる望みがほとんど断たれた状況で、もっと事態を真剣に捉え、生と死について、また人生について、一度ぐらいは深く考察してもよかったのではないかと、ちょっと残念だ。



 
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