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四半世紀ほど前だったろうか、一度だけ生賴範義さんのアトリエを訪ねたことがある。
アポが取れたので彼を尊敬しているイラストレーターの友人に声をかけたら「行きまっせ‼︎」と。
翌日伊丹空港から発ったのだが、直前、彼が機内持ち込みの荷物(バタフライナイフ)で引っかかり、危うく予定の便に乗り遅れるところだった。
ナイフは没収されたが、「悪いことをする人ではなさそうなので」という職員の言葉が気に入らなかったらしく、機内に入ってもブツブツ言っていた。「なんでそんな物持ってくんねん」と問うと、「寝首かかれるかも知れへん」と言う。お〜い誰にや!俺にか!?

そうして宮崎空港に降り立ち、レンタカーで生賴さんのアトリエに着いた。生賴さんは白い服を着ていた。
僕が何を差し置いても見たかったのは、スターウォーズのポスターの原画だ。いきなりアトリエを見せて欲しいなんていうのは失礼の極みではあるが、彼のアトリエだけは見たかった。
僕の失礼を生賴さんは気にもとめず案内してくれ、そして、僕と彼はそれを見た。






生賴さん宅へ行ったのは、「イラストレーターが描く肖像画」というコンセプトで考えていた企画のその象徴的存在として、お願いにあがったのがその理由。
一応その話は受けてくれるには受けてくれたのだが、後日電話があって、彼が求める仕事の進め方が現実的ではなかった(というより当時のうちでは対応困難)だったため、話は流れてしまった。

でも、生賴さんのアトリエで拝見した原画の数々は、想像に違わぬ素晴らしい作品群だった。匂いも覚えている。
一緒に来たイラストレーターの彼は自分の作品を持参しており、彼の絵は1ミリに拘る執念のスーパーリアルだったのだが、それを見た生賴さんは、凄いですね、と言いながらも、、

「でもこういう絵を描くのは苦痛ではないですか?」
と、彼に問うた。
「へへへ、く、苦痛ですわ」と彼が言ったその一言が忘れられない。

僕も彼にそういう仕事を頼んでいるひとりだったのだから。。。

「絵は楽しく描かないと」
と生賴さんは彼に言った。
なるほどなあと思った。
「生賴範義の絵」がどれもみな活き活きとしているのは、彼が楽しんで描いているからなんだと。

その日の宮崎は快晴だった。

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